真島吾朗、 台風に籠城を余儀なくされ、耳をつんざくような外の音を聞きながら、どうしてこんなことになったのだろうと考える。 真島吾朗。 最近、妙に縁がある。捜査の対象だからと言うことももちろんあるが、やたらと街中で出くわすし、彼はわたしに馴れ馴れしい。 いったいなぜだろうと頭の中に思い浮かべながら、目の前にある彼の背中の般若と、長い首筋と、丁寧に刈り込んだうなじを見つめる。隆起した肩甲骨と背骨、そのぐるりを覆う背筋が、硬い陰影を刻んでいる。 締まった、戦う体をしている、と思った。骨ばった体、筋肉の起伏、長すぎる腕や首、尖った肘や指の関節……。 張り詰めた皮膚に刻まれた般若の顔は、背筋のカーブに沿ってはいるものの、その緻密な描写ゆえかぞっとするほどリアルだ。 病的なまでに白い皮膚をしているため、他の男性の刺青のように肌の色に濁っておらず、紺、朱、黄、黒…が、たいへん美しく鮮やかだった。 なぜそんなところに絵を入れるのか、わたしにはわからないが、けれどもそれが素人目にも美しく、大変な技術を要しているのを知ることができる。肘の上から、背中一面の刺青。革のパンツを穿いた臀部にも、その鮮やかな絵が及んでいるのだろう。 「風呂入るか?」 「………」 「そない睨まんでもええやん。警察のネエちゃんにはなんもできへんって」 ひひっと笑うくちびるの端が、恐ろしいほど吊り上る。彼はわたしに横顔を向けている。左側の顔。眼帯をしているほうの顔だ。だが、彼はわたしのことが見えているような気がする。ときどき含み笑いをするために揺れる肩を見て、そう感じた。 その冷たい、底知れない目が、眼帯の下からでもわたしの挙動を見ていて、面白くてたまらないのだ。 「そのままやと風邪引くで。あんたの勝手やが」 広いベッドに腰を下ろして、そのまま仰向けに寝転がる、奔放な振舞にも、もう驚くことはない。 「………」 「警戒中かいな。仕事熱心やのう」 長い睫毛に縁どられた、灰色の瞳が、天井に向けられたままにもかかわらず、やはり彼にはわたしの様子が如実に見えているらしい。その瞳の下の茶色が沈着した薄い皮膚に、得体のしれない陰りが刻まれている。 「真島……さん」 「あぁ。」 「こんなこといつもしてるんですか」 「どないなことや。女ホテルに連れ込んどんのかってか」 「………」 仰向けに寝転がっていた体に寝返りを打って、わたしに向かって横になった彼が、頬杖をついて笑うのが見えた。 「意外と女っ気ないのはわかっています」 わたしが深呼吸してから言うと、すぐに彼が、ほお、と言った。 「あんたそないなとこまで見張っとんのかいな。かなんな」 「わたしは調査報告書を読んだだけです」 「どないなこと書いてあったんや。教えてや。何日間か俺の行動を張り込んであったんやろ。写真も何枚か撮られた気ィするわ」 床に坐って、毅然と見えるように背筋を伸ばしていたわたしは、自分の腹部にぐっと力が籠るのを感じた。真島吾朗の視線に圧倒されたからだ。 書類にクリップで留められた、植え込みの傍を歩いているこの男の姿を、わたしは、一瞬思い浮かべた。車の窓から隠し撮りされた一枚。その写真も、彼の眼は、こちらを見ていたのだった。 ぞっとする。 「そんなこと教えるわけないでしょう」 「いまは刑事と極道言うんは忘れようや。こないホテルの一室で、昼間の職業に触れるんは無粋やろ?」 「無粋ではありませんよ。台風に見舞われてやむなくこうなったに過ぎません。昼間の職業のままで結構です」 「冗談も通じひんのやな刑事っちゅうんは」 がたがたがた、と壁ごと突き破りそうな音を立てて、窓ガラスが揺れている。 「この調子やったら当分帰られへんな」 とぼやくように言ったあと、彼はそれきり黙りこんだ。わたしも黙っていた。五分ばかり沈黙が流れただろうか。濡れた体でじっとしているとさすがに寒さを覚え始めた。 「………お茶淹れます。飲みますか?」 「おう」 テレビ台の傍にある電気ポットと急須とカップ、備え付けの緑茶のティーバッグをすべて並べてから、慎重にお湯を注いだ。こぽこぽ、とお湯がカップを打つ音が心地よい。お茶が染み出す間に、スーツの上着を脱いで、ハンガーに掛け、カッターシャツの上から大判のバスタオルを羽織った。カッターシャツもぐっしょり濡れてはいるが、さっきよりはずっと暖かい。 「はい」 ベッドに横たわったままの真島吾朗に、淹れたお茶を持っていく。適切な距離を保ったまま顔を覗くと、閉じていると思った右目が、薄っすらとわたしを見ていたことに気付いた。 「そこに置いてくれ」 「………。」 そこ、と顎でしゃくって指された場所、ベッドの枕元のナイト・テーブルをちらっと見る。 そこに置くには、彼の頭の傍に手を付いて、身を乗り出さなければならない。 当然躊躇したが、かといって、そこまで気にするのも意気地がなさすぎる自分が嫌になる。 しかたなく、想定した通り彼の頭の傍に手を付いて、身を乗り出して、ティッシュ箱と照明の操作パネルの間に、こつんとカップを腕を伸ばして置いた、そのとき。 「素直やな」 という声が、耳に触れる前に、ベッドでわたしの体重を支えるためについた手を、彼の手が掴んだ。 驚いて目を見開く。信じられない気持で真島吾朗の顔を見ると、彼は笑っていたが、その右目は笑っていなかった。左目があれば、そちらも同じだっただろう。寝転がって、わたしを見上げた姿で、口元だけで笑っているのだ。 「無防備なんとちゃうか?」 ぎり、と握られた手首に鳥肌が立つ。上体を立て直したいが、下手に暴れてバランスを崩せば、わたしの下にある真島吾朗の顔に倒れこんでしまうのは明白だ。 わたしの体の影に覆われた彼の顔。暖色のベッドサイドの照明が、彼の額と高い鼻梁を照らしているが、長い睫毛の下にある彼の瞳は、深い色合いの闇が映っていた。さっきは灰色に見えたのに、いまは真っ黒の瞳に見える。 喉の奥で、ひ、と小さく呼吸が漏れた。初めは、かっと怒りがついたが、わたしの体内に宿った闘志など、この男の一瞥の前では、一溜りもなかった。とても、ただ一人の男に過ぎないとは思えなかった。柔道であれほど護身術を叩きこまれたというのに、彼の手はわたしの手の筋を抑えていて、力を込めるすべを完全に奪ってしまっている。 「離しなさい」 眉間に力を込めて言う。 くく、と笑い声が、白い喉の下の胸部から、漏れ出たかに思われた。彼は、笑いながらわたしを見たままだった。 「寒そうやなぁ。ぬくめたるわ」 「ちょっと……やめ、てって」 「ええやないか。ここどこやと思うとんねん」 「やめて!」 強い声を出した自分の顔が、蒼褪めて、絶望でひきつっているのがわかる。彼は、けらけらと、「かわいい声出すんやな」と歯を見せて笑った。 「逮捕しますよ。」 「なんや?知らんのか?男と女がホテルに入った時点でなぁ。合意やってことになるねん」 「それは民間人の場合でしょ?あなた暴力団のひとで、わたしは……」 「刑事さんやな。」 捻って筋をぐうっと指で押さえられているため、痛みはないが痺れてくる。 顔を顰めるわたしの顎に、彼の、もう片方の手がゆっくり伸びてきた。 指が輪郭をなぞる。背筋がぞわっとして、金縛りにあったように、わたしは動けなくなった。 意識を瞳に奪われてしまったから。 わたしの視線と意識は、彼の右目に注がれていた。彼のくすんだ黒い瞳も、ずっとわたしの目を見ている。最初は、目を逸らしてはいけない、屈してしまったかのようだ、と思っていたが、いまでは、目を見続けさせてしまう強制力が、明らかにわたしを縛りつけていた。 「ちゃん」 「………なんですか」 「下の名前なんて言うんや?」 「なんだっていいでしょ、」 彼のめくれた上唇の下で、前歯が、微かに下唇の薄皮を噛んだ。 「つれへんのう」 こわい目、と思ったその瞳の睫毛が、まっすぐに長くて、一瞬わたしを見つめたまま瞬く。 肌の美しさと色素の沈着した目蓋が、危なげな感じがして、 首が長くて、肩が筋肉と骨格でがっしりと構成しているのに、線がどこかしら細くもあって、 今更ながら、彼の容姿がとても端正であることに気付かされる。 ぎらぎらとした瞳が細められたからかも、しれない。 すこし優しそうに見えた、その一瞬のことで。 「………手、放してください」 「なんや。放さへんかったら逮捕するんか」 「いいから放してください」 一番に望んだのは、手を離してもらうことではなかった。 見詰めてくるのをやめてほしかった。 自信を無くしてしまう。真島吾朗。彼の瞳に見られ、見ていると、わたしを武装する肩書やプライドや理性や知性が、濡れたシャツと共に、くしゃくしゃに縮んでしまうかのような気がした。 「どないしよかな……チューしてくれたら放したるわ」 「馬鹿言わないでください。ほんとうに逮捕しますよ」 「何罪になんねん?」 「強制わいせつ罪ですね。手を放してくれなかったら暴行罪。あとあなたは暴力団なので脅迫罪も適用できると思います」 「三つもあんのかいな。ほなやっとかな損やな?」 「いいから。放しなさい」 「いーやーや。」 髪を滑った一滴は、雨に濡れたためなのか、冷や汗によるものなのか、わからない。わたしの前髪の下から、ぽつりとこぼれて、真島吾朗の右眉に落ちた。その感触に、彼が一度強く目を閉じる。 わたしの水滴が、彼の顔に掛かるほど、近くに向かい合っているのだ、とようやく気が付いた。 いつの間にこんなに近づいていたのだろう。 「最近の警察はハニートラップまで仕掛けよんのやなぁ」 ふっと笑った息がわたしの鼻先を掠める。 「まんまと引っかかったわ」 目を見開いて、わたしは露骨に身構えた。逃げるべきか攻撃すべきか──頭の中で激しく警報が鳴る。この状況は非常にまずい。意識しないうちに、わたしは自分が彼のテリトリーの中に迷い込んでしまったことを知った。 さまざまなパターンが一瞬で思い浮かんだ。彼はわたしを縛り上げて機密情報の手帳を奪うこともできるし、わたしを殴って屈服させることもできる。 だが、一番に感じたのは、彼が、にわかに興奮を帯びているということだった。彼が、わたしに犯罪を犯すなら、一番最初にわたしを組み敷くだろう、と、わたしは思った。 らんらんとした瞳。纏わりつくような視線が、わたしの目から離されることはない。他の男性のように、わたしの体のラインに視線を投げかけることもない……その目はわたしの顔にずっと注がれていた。彼がわたしの目、ひいては顔に興奮しているのは明らかだった。 「やめてください」 はっきりと焦りを感じる。息が詰まって、声が震えているのがわかる。 「放してください」 「ふ……なんや。怯えとるな」 そらそうやなぁ、と伸びのある声のふざけた口調で彼が言う。 「刑事やから無事や思うわけないわなぁ。若い女がホテル来て、なんもないわけがないわなぁ」 「………」 「昇進のためやろ。俺に近づいて罪を告白させたいんやろ?お手柄やもんなぁ。同期も出し抜けるほどや」 「誤解です。そんなわけないでしょ……」 「“そんなわけない”のにホテルに筋者と入っとんのやったら、ただの世間知らずのアホ娘や」 「………」 「あんま刑事向いてへんのちゃうか?え?」 蒼褪めて凍り付いたわたしの顔を見て、彼はにや、と口角を持ち上げる。 何をされて、何を言われているのか、頭の中でうまく処理が追いつかない。 頬に触れていた指が、頭のほうに伸びてきて、人差し指でわたしの髪を巻きつける。その髪の行方を見つめながら、彼のくちびるが、まだ濡れとる、と独り言をつぶやいた。 「ハニートラップやないんやったら、お互い時間の無駄や」 「………」 不意に、彼は、わたしの手を離した。 髪を触っていた指もひっこめる。 体を起こして、まるで寝起きの人間のように大きく欠伸をしながら、横たえていた半身をむくりと起き上がらせた。 一瞬、手を離してもらったことに気付かなかったが、急いで一歩引き下がる。適切な距離が保たれ、すっかり自由になったことを確認すると、いまになって心臓がばくばくと忙しく鼓動し始めた。 「ちーとマシなったかのう」 がたがた……と頑丈な木製の鎧戸が揺れるほどの窓べに目をやりながら、真島吾朗が言う。 台風は、夜のうちに過ぎ去っていくと、朝のテレビが言っていた。まだまだ真っ只中に外は巻き込まれているはずだ。事実、ずうっと、木製の板やプラスチックのペットボトルかなにかが、地面にガラガラと音を立てて引っ張られるような音が響いてくる。 「帰るわ」 「え……」 「家帰って寝よ。ちゃんは、パトカーで迎えに来てもらいや」 「何言ってるの?外は豪雨ですよ。危ないから出ちゃいけません。なんのためにこんなところにいると思ってるんですか」 「そうか?ま、大丈夫やろ」 俺んちすぐそこやねん、と言う声は抑揚があって、ふざけているように聞こえる。だが、彼の顔から笑みが消え去ったことを、わたしは気づいていた。 「ほなさいなら」 乱雑にドアノブに引っ掛けられていた蛇革のジャケットを肩に掛ける。ジャケットの滴が、ぽとりと彼の般若の上を滑った。 「………真島さん!危ないですってば!ほんとに行くんですか!?」 このひとは本気なのだ、と気付いて慌てて彼のジャケットに手を伸ばす。引っ張られたことに気を悪くしたらしい、眉間にしわを寄せた彼が、一瞬立ち止まってわたしに振り向いた。 「逮捕されたくないしな」 「………」 「またな。ちゃん………こんどメシ食いに行こうや」 「………刑事として引き留めますけど、行ってしまうんでしょうね。お気をつけて」 「クク。やっぱつれへんのう」 「………」 笑っているけれど、やっぱり笑っていない目で。 彼はその、不思議な、恐ろしい表情を見せて、首を傾げたように曲げながら、だるそうに部屋を出て行った。 あとに残されたわたしは、ひとりきりで、扉の向こうに消えて行った真島吾朗、の姿を、ずっと思い浮かべて、立っていた。 なぜか、胸に大きな穴が開いた気が、した。 真島吾朗、個人への捜査はその後すぐに打ち切りとなった。真島組ではなく、東城会の東京に構える直系団体全てに捜査の手を広めることが決定したからだ。 チームを編成し直したり、とにかく上の方針への徹底させたりと、全体的に不穏な空気が漂っている。ちっとも、事態は好転しているようには思えなかった。 何か、すごく嫌な予感しかしなかった。 言葉にはし難い、嫌な予感が。 ことぶき薬局で栄養ドリンクを購入し、自動ドアを出たところで、同じ課に所属する恋人と合流する。 冷たい風が、ぴゅっと切り裂くように衣服のすそを掠めていった。ぞくっと寒気がして、恋人に、寒いね、などと話しかける。まだ付き合って数日しか経っていないこのひとを、愛しているのか、いないのか、いまはよくわからない。時期が悪かった、と言うのもある。 以前ははっきりと恋愛感情を抱いていたが、いまは、仕事が多忙すぎて、恋愛が生活のなかで最下位になっていることは否めない。 もう二十時を過ぎているのに、いまから食事をさっと済ませて、二十時三十分にはミーティングが待っている。 すこし歩き出したときに、恋人が自動販売機でお茶を買ってくる、と言うので、電柱のそばで待つことにした。ビニル袋から、先ほど買った栄養ドリンクの瓶を取り出して、封を切って一息に飲み干す。 ふう、とため息をついて顔を上げると、向こうの通りから真島吾朗がやって来た。 驚いて、素知らぬふりをしようと思ったにも関わらず、その鋭い右目と目が合ってしまった。 「おお……ちゃん」 迷いなくこちらに歩いてくる彼に、わたしは困惑をあらわにする。 「……」 真島吾朗と顔を合わすのは、あの台風の日以来だ。 まだ、どういう顔をすればいいのかわからない。 決してお友だちではない。彼からすればわたしは間違いなく敵に当たるはずだ。それなのにどうして……。 ふとすぐそばにいるはずの恋人に目をやると、体をかがめてペットボトルを取り出しているところだった。じきに、ここにやって来るだろう。そして、ややこしいことになるのが目に見えている。 真島吾朗もわたしの視線の行き先を眺めていたらしく、彼は、次にわたしに目をやった。 探るような目。 わたしの心の中を、どう考えているのかを、つぶさに調べているように見えた。 「はあん、そういうことかいな」 閉ざしていたくちびるが開き、そう言った。 「……」 ちっと舌打ちする音がした。 それが、彼の口から漏れたのだとは、数秒の間気付かなかった。 なぜか後ろめたい気持ちになって、彼の目を見ることができなかったからだ。 ずっと、喉のあたりに目をやっていた。 わたしが何か言おうと息を吸い込んだとき、彼が、デカは苦手や、と呟いたのが、騒音に紛れて聞こえた。 「やっぱり、あんとき、あんた抱いといたらよかったわ」 彼がそう言ったのと、わたしがようやく彼の目を見たのは、同じタイミングだった。 じゃらじゃらと騒がしいコンビニエンスストアの店内の音、騒ぎ声、風が吹き抜ける音が、一瞬ぴたりと静かになった気がした。 真島吾朗。 冷たい印象を与える瞳は、もうわたしには向けられていない。 笑っているかと思ったが、くちびるは、真一文字に結ばれている。 恋人が、ペットボトルを持ってこちらにやって来るのが横目に見える。 けれども、真島吾朗は、その前に姿を消すだろう。何かを言わなければならない気がして、栄養ドリンクの空き瓶を握りしめる。 何か言わなきゃ。 「わたしも。」 急いで紡いだ言葉に、わたし自身驚いて目を見開いた。 聞こえていなければいい、と思ったが、踵を返そうとしていた真島吾朗の耳にもしっかりと届いていたらしい。 無言で空き瓶を握る手首をがしっと掴まれて、そのままぐいぐい引っ張られる。 慌てて歩く体勢をとって、早足のその後を追う。これでは、二人で仲良く手を繋いで歩いているようにしか見えないだろう。 とにかく、いずれにせよ、このままついていくわけにはいかない。ミーティングがあるし、食事もまだだし、わたしはべらぼうに忙しい。 まだ、恋人とも別れていない。 ちょっと待ってください、と言わなければならないが、あと少しだけ黙っていようと思った。 蒼褪めた、なぜか怒ったような顔をしている彼の顔を、もう少しだけ見ていたいから。 |